わたしの学びエピソード

その一歩が、不登校だった自分を想像もできない未来に導いてくれた。健康福祉学群のフィールドワーク体験談

桜美林大学の健康福祉学群では、2023年度から学生によるフィールドワークを推進しています。

 

フィールドワークとは、「野外(フィールド)に出て、調査(ワーク)する」という学び方。桜美林大学では、「健康・スポーツ」「地域交流」「食」「子ども支援」「高齢者や障害(児)者支援」など、さまざまな分野での50カ所以上のフィールドに参加することができます。

 

今回は、不登校の経験からコミュニケーションに苦手意識を持ちながらも、入学してすぐにフィールドワークに飛び出し、そこからどんどん活躍の場を広げていった健康福祉学群3年生のSATOIさんに、フィールドワークの体験について話を聞きました!

目次
  • PROFILE
  • 健康福祉学群のフィールドワークについて
  • 不登校だった自身の経験と通ずる子ども支援の現場へ
  • フィールドワークは、現場に行ったあとにも続く
  • 最初は、不安な気持ちもそのまんまで大丈夫!

プロフィール

SATOIさん

【学群】健康福祉学群
【専攻】社会福祉学専攻
【学年】3年生(※2025年度現在)
【所属】SAKURA blooms、社会福祉ボランティア部

健康福祉学群のフィールドワークについて

健康福祉学群では、桜美林学園の「学而事人(がくじじじん)」というモットーのもと、教室での学びだけでなく現場での実践や体験を積み重ねていくフィールドワークを大切にしています。フィールドワークは1年次から履修可能で、50以上のプログラムから自由に選択することができ、社会に求められていることはなにか、自分にはなにができるのかを考えていくことができます。詳しくはこちら

不登校だった自身の経験と通ずる子ども支援の現場へ

——まずは、どんなフィールドワークに参加したのか教えてください。

 

SATOIさん 最初は、入学してすぐの5月くらいの時に、授業で実施されたフィールドワークに参加しました。

 

経済的に困窮している家庭や不登校の子どもたちの支援をしている団体の活動に参加して、現場の見学をさせてもらったり、実際に子どもたちに勉強を教えたりといった活動を、3-4回ほどしました。それからもボランティアなどを含めて、いろいろな現場へ行かせてもらっています。

フィールドワークの発表準備の様子

——入学してすぐですか! 行動力がありますね。もともとフィールドワークや子どもたちの支援に興味があったんですか?

 

SATOIさん 自分たちが入学した年からフィールドワークが始まるということで、大学のパンフレットにも書かれていたのを入学前から目にしていました。でも正直言うと、当時は楽しみな気持ちよりも不安な気持ちの方が強かったんです。

 

——それはどうしてでしょうか?

 

SATOIさん 中学生、高校生の時に、学校に行きづらかったり、行けなかったりした経験があって。だから、当時は初対面の人とコミュニケーションをとることにすごく苦手意識がありました。

 

——そうだったんですね。不安を抱えながらも「参加してみよう」と決めたのはなぜだったんですか?

 

SATOIさん 中学校と高校の担任の先生のおかげもあって、高校を卒業する頃には少しずつ人とコミュニケーションをとることに慣れてきていたんです。コミュニケーションに慣れることに大学生になっても挑戦してみようと思って、思い切って最初のフィールドワークに踏み出しました。

 

実際に参加してみたら、フィールドワークならではの難しさもありました。でも、そこでの出会いをきっかけに「不登校の当事者として発表してくれないか」といったお声がけをもらったり、授業でも「君の経験を話してほしい」と言ってもらえたりと、活動が広がっていきました。

 

そうしたことを続けていく中で、同世代の学生の中にも不登校だった経験をもつ人がいると知ることができて、今活動している「SAKURA blooms」という学生団体のメンバーとも出会えました。

——チャレンジしたからこその出会いが続いたんですね!学生団体の活動ではどのようなことをしているんですか?

 

SATOIさん もともとは、自分に「授業で話してくれない?」と声をかけてくれた先生の講義後に、同じように不登校だったり、学校に行きづらかったりした経験がある学生たちや先生と話している中で、みんなで不登校について考える活動をしてみたらいいんじゃない? 」といった流れになり、不登校に関する映画の上映会をやってみたことが始まりでした。

 

6人のメンバーで上映会をやったあと、「せっかくこんな風に集まれたんだし、大事な経験をしているメンバーばかりなんだから、今後も活動を続けていこう」と話して、SAKURA bloomsを立ち上げたんです。

 

今は、その上映会に来てくれた不登校経験のある学生も含めた7人で、「学校のあり方」をテーマに研究したり、自分たちの不登校経験を発信したりしています。

SAKURA bloomsで自らの経験を伝えている様子

フィールドワークは、現場に行ったあとにも続く

——さっき、「フィールドワークならではの難しさもあった」と話していましたが、具体的に聞いてもいいですか?

 

SATOIさん 自分よりもある程度下の年齢の子どもたちと話すことになるので、「いつも通りの話し方でいいのかな」とか、「この言葉だったらわからないんじゃないかな」とか、変なブレーキがかかってしまって。どうコミュニケーションをとったらいいのか、どうやって勉強を教えたらいいのかがわからなくなってしまうということがありました。

 

あとは、ただ見学をしている時でも、「どういう顔でいればいいんだろう」みたいなことをよく考えました。そこにいる子どもたちはさまざまな事情を抱えていて、それぞれ何らかの苦しい思いをしてきている子たちです。だからこそ「急に外からきた知らない人が横に座ってるのを、どう感じるんだろう」とか、「どれくらい声をかけていいんだろう」とかいったように考えてしまって、現場で子どもたちと対面するからこそ感じる難しさがありました。

 

——なるほど…。そうした気持ちをどうやって消化していくのでしょうか。

 

SATOIさん フィールドワークが終わったあとに発表をする時間があります。その発表準備でも気づいたことをまとめていく必要がありますし、普段からフィールドワークの記録である「フィールドノート」に感じたことや疑問を書き込むことで、気持ちを整理していました。毎回何十ページにもなるくらい、色々なことを肌で感じて考えていましたね。

 

それからも色々な経験を重ねてきた中で、最近になってようやく、「こっちが緊張していたら相手も緊張しちゃうから、ありのままの自分で接することが大切なのかもしれないな」と思えるようになってきました。

 

——フィールドワークには発表もあるんですね!SATOIさんはコミュニケーションに苦手意識があったと言っていましたが、発表についてはどう感じていましたか?

 

SATOIさん 正直、高校生の頃は発表なんて一番苦手で…。でも、1年生の6月くらいには、一緒にフィールドワークに行ったメンバーと話し合いながら、スライドを準備したりして発表にのぞめていました。健康福祉学群ではグループワークをする機会もあるので、人と話すということに慣れやすいのかもしれません。

 

今は3年生で、数えきれないほど発表の場に立ってきました。いまだに緊張はするんですけど、そうは見せない技術が身に付いたというか(笑)。「今日は緊張して上手く話せなかったな」とか、「ここはもう少しこうしたら良かったな」とか、毎回振り返りながら改善していくくらいの余裕は持てているように思います。

発表をするSATOIさん

最初は、不安な気持ちもそのまんまで大丈夫!

——大学では座学も多いと思いますが、フィールドワークの良さってどんなところだと思いますか?

 

SATOIさん 例えば、「人とコミュニケーションをとる」といったことに関しても、どれだけコミュニケーション技法を座学で学んだとしても、実際に現場でやってみないとわからないことが絶対にあると思います。

 

不登校の経験を経た今、こうやって話せているのも、これまで現場で重ねてきた一つひとつの体験や発見が土台になっている。「今日は初対面の人と上手く話せなかったな」「次は座学で学んだあの技法を取り入れてみようかな」「話を聞く時の間をもう少し工夫してみようかな」と試行錯誤して、座学と現場の繰り返しを続けることで気付けたことや身につけられたことがあるな、と思っています。

——SATOIさんご自身が、フィールドワークを通してすごく変化しているのかなと思うんですが、入学当時に今の自分のことって想像できたと思いますか?

 

SATOIさん いや、絶対想像できなかったと思います!

 

不登校だった時、ずっと家の中にいたんですけど、「こんな状態の人は世界に一人だ」と思っていて、とても落ち込んでいて。人と関わっている自分が想像できなくて、将来どうなっちゃうんだろうってずっと考えていました。

 

最近、自分の経験を誰かに伝える時に話すようにしているのが、「想像もできないようなことが将来には起こりうるんだよ」っていうことです。

 

フィールドワークからつながった縁がなければ今の友人関係もなかったと思うし、こんな風に取材を受けたり、人前で話すこともなかったかもしれない。今ではそんなに苦にならないけれど、当時はグループワークでみんなをまとめるような役割なんて、絶対できなかったと思います。本当に想像もできないようなことは起こるんだって、身をもって感じています。

——最後に、フィールドワークが気になっている方へメッセージをお願いします!

 

SATOIさん 人と話すのが苦手な人は、一歩踏み出すのに勇気がいると思います。自分もそうだったので、不安な気持ちはすごくわかります。

 

まず、その気持ちはそのまんまでいていいと思います。その上で、「こんなのあるんだ」くらいの気軽な気持ちで参加する感じでいいんじゃないかな。実際、自分と同じような不登校の子どもたちの支援をしている団体があることに驚いて、「ここなら行ってみたいかも」って思ったことが参加したきっかけでした。

 

あとは、フィールドワークに参加すると、発表に向けてやりとりをしたりすることもあって、他の学生たちと仲良くなれるきっかけもできます。それに、健康福祉学群の先生たちは相談に乗ってくれる人が本当に多いので、不安なことはいつでも相談できる環境もあるんです。

 

フィールドワークが初めてなら、わからないことがあっても当たり前。なので、どんどん質問して大丈夫です。だから、不安な人も安心して一歩を踏み出してみてほしいし、いつか後輩たちと経験とか想いを共有できる日が来たら嬉しいなって思っています。