わたしの学びエピソード

心理学を学んだ先に、お笑いの道があった!? 不登校も病気も糧にして、人を笑顔にする夢へ(リベラルアーツ学群 八木澤敬大さん)

桜美林大学のリベラルアーツ学群では、「統合領域」「社会領域」「人文領域」「自然領域」の4領域・30プログラム(※)の中から「メジャー(主専攻)」「マイナー(副専攻)」を選択し、関心のある領域について学びを積み重ねていきます。
 
そんなリベラルアーツ学群4年生の八木澤敬大さんは、自身の人生に起こったさまざまな経験を胸に心理学を学び、自分と同じような経験をした人を救いたいという夢を持って大学で学び始めました。4年間の大学生活の中で得た多くの経験で、その夢はさらに磨かれ、なんとお笑い芸人の道へと進むことに!
 
苦悩や気づきを重ねて至った桜美林で学ぶ先輩の今を、少しのぞかせてもらいましょう!
 
※2026年度より4領域・32プログラムに変更予定

目次
  • PROFILE
  • 自分と同じような経験をした人を救うため、心理学を学ぶ
  • 大学祭実行委員会の活動で得た、大きな気づき
  • 卒業後は、多くの人を笑顔にできるお笑い芸人に!
  • 受験勉強では、「自分とちょっと話し合うこと」を大切に

プロフィール

八木澤敬大さん

【学群】リベラルアーツ学群
【メジャー(主専攻)】心理学
【マイナー(副専攻)】言語教育
【学年】4年生(※2025年現在)
【所属】桜李祭実行委員会

自分と同じような経験をした人を救うため、心理学を学ぶ

——桜美林大学のリベラルアーツ学群を選んだきっかけを教えてください。
 
八木澤さん まずは心理学が学べるというところ、それからメジャー(主専攻)とマイナー(副専攻)を組み合わせることができる「メジャー・マイナー制度」に惹かれたのが大きいです。
 
僕自身、不登校の経験があったり、高校の時に海綿状血管腫という病気を患って心を痛めた経験があったりして。自分と同じような経験をした人たちをどう救えるかを考えた時に、「心をサポートする人になりたい」と思って、心理学を学ぶことを決めました。
 
他大学だと、心理学を学ぶ場合は心理学一本で勉強していくという形が多いですよね。その点桜美林大学は、「なるべく広く学んで、その中で専門性も身に付けようね」という形なのが良いなと思いました。
 
あと、関連する分野の授業を組み合わせて学べる「学群制」だった、というのも決め手のひとつで。各学部で分かれていて、その学部の人としか仲良くなれないというのではなく、理系も文系も同じ敷地内で学んでいるというのが刺激になりそうだな、と思っていました。
 
——心理学を学ぼうと決めたきっかけの経験について、もう少し聞いてもいいですか?
 
八木澤さん はい。ふたつあるんですけど、ひとつは不登校の経験です。中学1年の夏くらいから急に学校に行けなくなってしまって、それから高校に入るまで、ほとんど不登校の状態だったんですよ。
 
父親も母親も、体育会系でパワフルなところがあって。何か相談をした時にも、「大変だね」といった共感ではなく、「お前ならできるよ」「頑張れ頑張れ!」といった応援が返ってきてしまうところがあり、僕にはそれが合わなかったのが理由のひとつだったと思います。
 
——「頑張れ」と言われると、余計プレッシャーになってしまいますよね…。
 
その後、親も変わってくれて共感してくれるようになりましたし、今ではとても感謝しているんですけどね。それで、最終的にほぼうつ状態で、不登校になってしまいました。
 
その時にあるカウンセラーの方に出会って、「そうした環境に原因があるかもしれない」と理解してもらえたり、両親も一緒になって解決へ向けて動いてくれたことで、高校からは毎日学校へ通えるようになったんです。
 
そんな経験から、「そのカウンセラーの先生のようになりたい」っていうのが、一番の夢になりました。

——良いカウンセラーの先生と出会えたんですね。もうひとつのきっかけについても教えてもらえますか?
 
八木澤さん 病気は、本当に突然のことでした。高校2年生の9月26日。今でも日付を覚えてます。
 
その日バイトに行こうとしたら、信じられないくらいの頭痛がギギギッときて、緊急で病院へ向かい、MRIなどの検査をしたら、「海綿状血管腫」だっていうことが発覚しました。脳にゴルフボールくらいの血腫があると言われて、そのまま緊急入院をして。
 
1ヶ月くらいで退院はできたものの、視界の右下4分の1が見えなくなってしまうという後遺症が、今でも残っています。当時は、ここからさらに見えなくなる部分が広がる可能性もあると言われていて。
 
——それは、大変な経験ですね……。
 
八木澤さん その時は本当に辛くて、泣きじゃくったりもしました。
 
心身の病気に苦しんでいる自分と同じような経験をした人たちを助けたい……というと少しおこがましいですけど、少しでも楽になってもらいたいと考えて、心理学の道に進もうという気持ちを強くしたんです。

大学祭実行委員会の活動で得た、大きな気づき

——これまでの桜美林大学での生活で、一番記憶に残っていることは何ですか?
 
八木澤さん 町田キャンパスの大学祭である「桜李祭」の実行委員会での活動です。3年生の時に副委員長をさせてもらったんですが、当時250人程度いたメンバーの一人ひとりをサポートするのって、正直すごく大変で…。
 
それでも、「寄り添いたいな」という気持ちがあったから、なるべく声をかけて、とにかく笑顔で明るくみんなに接するようにしていたんです。
 
でも、その経験を通して「無理に明るくする必要はない」という柔軟さを身に付けることができたな、と感じています。

桜李祭実行委員のメンバーと。

——「無理に明るくする必要はない」という柔軟さ、ですか。
 
八木澤さん はい。それまでの僕は、人をサポートするというのは「とにかく明るくさせればいいんだ」「みんなに笑顔で話しかければいいんだ」と思ってしまっていたところがあったんです。
 
でも、大学祭実行委員会で副委員長をした1年間を通して、「いろんな人がいるんだな」ということを学べました。「悲しい時は悲しさに寄り添ってほしい」という人もいれば、「悲しいけど元気づけてほしい」という人もいるし、「悲しい話をネタにして笑いに変えてほしい」という人もいる。
 
その人の空気感から「こういう人なのかな」と予想を立てて、実際にやってみて、もし違ったら改善していくという、人に対する向き合い方を試行錯誤できた機会でした。
 
——なるほど!その学びは、心理学にもつながってきそうですね。
 
八木澤さん そうですね。ある意味、臨床、つまり医療の現場のような経験だったのかなと思います。
 
心理学の学部のある学校へ行っても、そういう臨床的な現場に出るのは卒業してからなので、実際に現場へ出てみたら「教科書と違うぞ…」ととまどう人も多いと思うんです。その点僕は、現場でのリアルな対応というものを大学祭実行委員会の中で経験できたのかな、と思っています。
 
——八木澤さんは、入学式の司会もされていましたよね。色々なことに挑戦されていてすごいです!
 
八木澤さん ありがとうございます!桜美林大学って、やりたいことにチャレンジできるチャンスが多いという印象はすごくあります。
 
「入学式も自分たちで作るんだよ」って言ったら、他大学の人に驚かれることが多いんです。僕がやっていたように、入学式の司会を生徒がやるというのも他大学ではあまりないと思いますし。桜美林大学には、そういう自主性を伸ばすきっかけがたくさんあるんです。
 
入学式や卒業式に卒業生を呼んでメッセージをもらうのは一般的ですが、現役の学生に実践させて、「こういう今頑張ってる人たちがいるんだよ」というのを見せるっていうのも、桜美林らしいやり方だなと思います。

八木澤さんが登場するのは、動画の1:11:01から

入学式で司会を務めた時の様子

卒業後は、多くの人を笑顔にできるお笑い芸人に!

——これまで受けた中で、印象に残っている授業はありますか?
 
八木澤さん 「心理学的支援法」ですね。ユングやアドラーといった心理学の歴史的な考え方を座学で学んでいく授業なんですが、実際に先生が経験されたお話を混ぜつつ、生徒同士でも話し合う時間を取り入れながら教えてくれるので、すごく想像しやすくて楽しいんです!
 
「実際こういう場面になったら、自分はどうだろう」と考えさせられたり、「日常から活かせるな」という傾聴や共感の大切さを教えてくれたり。もし心理士という仕事に就かなかったとしても、社会に出た時に大切だなと思うことを学べています。
 
——卒業後は、カウンセラーや臨床心理士になる予定なのですか?
 
八木澤さん 実は、少し気持ちが変わったところがあって。大学祭実行委員会の副委員長をやっている時に、とにかく明るく接してみんなが笑顔になれるように努めていた時期があったんですけど、そうするとみんなの明るさがちょっと増すなと気づいて。
 
「これを極めたらどうなるんだろう」と考えていった先に、「お笑い芸人になる」という夢ができました。
 
——お笑い芸人!
 
八木澤さん ははは。そうなんです(笑)。カウンセラーとして一人ひとりに寄り添うのは時間がかかるけれど、お笑い芸人なら、一度に多くの人を笑顔にできる。その方が自分には合っているんじゃないかと感じたんです。実はすでに事務所に所属して、養成所に通っています。

——既に養成所にまで通われていて、すごい行動力ですね! これまでとは違う世界に飛び込むのは怖くなかったですか?
 
八木澤さん 僕はこれまで、いろんなプレッシャーやストレスから逃げてきて、何かに挑戦するっていうことがなかったんですよ。自分の限界を知って、打ちひしがれて、悲しくなって、またうつ状態だったあの頃に戻ってしまうのが怖かったから。
 
でも、高校や大学に入って色々な経験をして、「外からの見え方が変わったり誰かに何かを言われても「自分」は何も変わらないんだ」と思うことができるようになったんです。
 
「視界が欠けてしまった自分も、受け止めてあげたらいいかな」っていう考えが身に付いて、大学祭実行委員会の副委員長をやって、「俺はこうやって人に影響を与えられるんだ」っていう自信がついたんです。
 
今の自分にも、昔の弱かった自分にも向き合えるんじゃないかと思えるようになった時に、「完全に勝敗がつく勝負の世界に一度飛び込んでみたいな」っていう気持ちが芽生えました。
 
——すごいなぁ。これからの活躍が楽しみです!

受験勉強では、「自分とちょっと話し合うこと」を大切に

——受験生に、なにか伝えたいことはありますか?
 
八木澤さん 勉強を面白いと思えるかどうかは人によるし、受験勉強はやっぱり相当つらいことだと思うんです。
 
ただ、今思い返せば、勉強って自分との対話というか、どれだけ自分と見つめ合えるかっていう時間だったなとも思っていて。「これはきついな、僕にはできない」と思った時に、自分がどう対処するかが問われていたような気がします。
 
僕から伝えたいこととしては、「絶対に無理はしないで」ということ。自分が壊れちゃうって思うなら、一回休むというのも手だと思うし、まだいけるって自分を信じられるんだったら、頑張ったらいい。とにかく自分と話し合いながら、自分の心と体を大切にしつつ進めることが大切で。
 
もし、「思ったように成績が上がらない」とか「つい怠けちゃう」とかいうことがあっても、自分を嫌いにならないでほしい。落ち込まないで、自分とちょっと話し合って、見つめ合って、「今の君の状態はどうなの?」と問いかけて、そこから考え直すことをしてみてほしいです。
 
今はSNSで、すごく頑張っている人ばかりが目についてしまって、しんどくなることもあると思います。だけど、「自分にはこの人みたいにできないけど、それも自分だもんな」と受け入れてみてほしい。その上で、自分なりのやり方で頑張って乗り越えた先に得られる何かが、絶対にあるということも伝えたいです。