キャンパスライフの参考あれこれ

図書館の本をみんなで選ぶ!? 書店のPOP作りも学べる「学生選書ツアー」に潜入

RELEASED 2025.9.22

桜美林大学には、町田キャンパス・新宿キャンパス・多摩キャンパス・プラネット淵野辺キャンパス・東京ひなたやまキャンパスと、それぞれの学びの拠点に図書館があります。授業や課題のために本を借りるのはもちろん、落ち着いた空間でレポートを書いたり、ちょっと気分を変えて読書をしたりと、多くの学生にとって身近な存在です。
 
しかも桜美林大学の図書館は、ただ「本が置いてある場所」にとどまりません。学生が主体になって読書会を企画したり、作家を招いてトークイベントを運営したりと、参加型の学びの場としても活用されています。こうした活動の多くは、有志の学生「図書館サポーターズ(通称:図書サポ)」によって企画・運営されています。
 
今回紹介するのは、そんな図書館主催、丸善雄松堂の協力により開催した「図書サポBook Hunting 2025(以下、選書ツアー)」。普段は教員や職員が蔵書を決めますが、この日は学生自身が本屋を訪れ、図書館に置きたい本を選ぶことができる企画で、2014年の第1回から、コロナ禍での中断をはさんで毎年開催されています。
 
しかも、ただ本を選ぶだけではなく、図書館で掲示するためのPOP作りにもチャレンジするため、「ただ読む」だけでなく「誰かに届ける」という視点から本と関わることができる、とてもユニークな体験になっています。
 
2025年8月6日、夏休み期間を活用して選書ツアーに参加したのは、以前「ビビビッ!!」にも登場してくれたリベラルアーツ学群4年の八木澤敬大さん(記事はこちら)。本を選ぶ楽しさ、POPで伝える面白さをどう感じたのか、八木澤さんの言葉を交えながらお届けします。

目次
  • 大型書店で楽しく迷う——選書は“おみやげ感覚”で
  • プロの技を学んで、オリジナルのPOP作りに挑戦!
  • 個性あふれるPOPが完成!
  • 本との関わりは、もっと自由で楽しいものに

大型書店で楽しく迷う——選書は“おみやげ感覚”で

選書ツアーで訪れたのは、桜美林大学多摩キャンパス近くの商業施設「ココリア多摩センター」5階にある「丸善・多摩センター店」。普段から多摩キャンパスの学生がよく利用する本屋で、売り場は広く、話題の新刊から専門書までぎっしり並んでいます。
 
まさに本好きにとっての宝探しの場ともいえる空間での選書ツアーには、図書サポの学生8名に八木澤さんを加えた9名が参加しました。
 
選書の基準は「図書館の蔵書として欲しい本、後輩・先輩・先生方に勧めたい本」。一人当たりの予算は20,000円(税抜)で、3〜7冊を目安に選びます。単に自分が欲しい本ではなく、大学の図書館に並べることを意識するのが大事なポイントです。

普段の買い物とは少し違う視点が求められるため、参加者はみな真剣そのもの。自分が読みたいジャンルに加え、「こんな本が置いてあったら友達も手に取るかな?」と考えながら、専門書コーナーの棚にも足を運んでいました。

大型書店ならではの空間を楽しみつつ、圧倒的な本の数やジャンルに迷い、なかなか決めきれない八木澤さん。そこで、図書館長の片山博文先生に選書のアドバイスを求めました。

片山先生「おみやげを選ぶような気持ちで探すといいですよ。おみやげ選びは、相手に喜んでもらえることも大事ですが、自分自身が『本当にいい』と思えるものを選ぶのが大切ですよね。図書館の本も同じで、八木澤さんが心からいいと思える本なら、きっと他の学生にも喜んでもらえるはずです」
 
この言葉をヒントに、八木澤さんは小説『成瀬は天下を取りにいく』など、自分が興味を持ちつつ、他の人にも楽しんでもらえそうな本を選んでいきました。

選んだ本は、専用のハンディターミナルで「ISBN(国際標準図書番号)」を読み取って登録。まるで図書館の司書になったような感覚で、世界共通の識別システムに触れる貴重な体験も味わえました。

プロの技を学んで、オリジナルのPOP作りに挑戦!

選書を終えたら、多摩キャンパスで「POP作り」に挑戦です。
 
普段は書店で当たり前のように目にするPOPですが、いざ自分で作ろうとすると「何を書けばいいんだろう?」「どうすれば目を引けるんだろう?」と意外と悩むもの。
 
そこで今回のツアーでは、「学びのつながりを育む」をモットーに大学図書館の支援する大丸善雄松堂の佐藤さんが「プロならではの技」を伝授してくれました。自分が選んだ本を、より多くの学生に手に取ってもらうための工夫を学んでいきます。
 
佐藤さん「限られた書店のスペースで、日々入荷する本とどのように入れ替えるかが、書店員の悩みであり醍醐味でもあります。POPは『Point of Purchase』の略語で、その場で『欲しい!』と思わせ、手に取ってもらうためのアイテム。目を引く、気を引く、思わず手に取りたくなるような工夫が大切なんです」

夏休みのオープンスペースで、レクチャーとPOP作りに向き合う参加者たち。

佐藤さん「POPをうまく使えば、新刊はより探しやすくなり、既刊は表紙だけでは伝わらない魅力も表現できます。実際、ある既刊本の売り上げを急激に伸ばしたPOPは『魔法のPOP』と呼ばれ、全国の書店に配られたこともあるほど。誰にとっても、その時に出会った一冊が新刊になるので、その気持ちに寄り添って本の魅力を伝えてみてください」
 
さらに実践的なアドバイスも続きます。感想や感情をストレートに書く、作品の印象的なキーワードを使う、流行りの言葉を取り入れる…。ほんの少しの工夫でPOPがまったく違うものになることを知り、参加者たちは驚きながらも、自分の作品に積極的に取り入れていました。

社員さん「POPで大事なのは、お金や時間、才能やセンスよりも、この本の良さを伝えたいという気持ち。皆さんの思いがこもったPOPで、本を手に取る人の心を豊かにしてあげてください!」

個性あふれるPOPが完成!

こうして完成したPOPは、どれも力作ぞろい! 話題作の面白さを前面に出したもの、イラストや文字デザインを凝らしてインパクトを高めたもの、紙を切り貼りして目を引く仕掛けを施したものなど、学生たちの個性がしっかりと表れていました。短い時間の中でも「どうすれば人の目に留まるか」を考え抜いた痕跡があり、見ているだけでもワクワクする仕上がりです。
 
そんな中、八木澤さんが挑戦したのは、小説『成瀬は天下を取りにいく』のPOP作りでした。
 
八木澤さん「この本は主人公の成瀬がいろいろな挑戦をする青春小説です。僕自身も、芸人になるために挑戦をしているので、キャラクターからエネルギーをもらえるイメージをPOPに込めました。アドバイスのおかげで、思った以上に上手にできたと思います!」

力強いデザインと、興味を引く言葉が絶妙に組み合わさった、素敵なPOPです。改めて、今日の選書ツアーの感想は?
 
八木澤さん「普段あんなにじっくり本を選ぶことはなかったので、とても面白かったです! いつもは漫画の新刊を買うくらいですが、時間をかけて探せば自分に合う本が見つかるのだと気づかされました。
 
POP作りを通して、本の魅力をどう伝えるかを考えることも新鮮でした。誰かに好きなものを勧めるのは少し勇気がいりますが、その分、誰かが自分の選んだ本を手に取ってくれたらすごく嬉しいと思います。人に勧める力や伝える力、それを表現する力は、人生のいろいろな場面で役立つと思います!」

本との関わりは、もっと自由で楽しいものに

最後に、図書館長の片山博文先生に今日の感想を伺いました。
 
——選書ツアー、とても好評でしたね!
 
片山先生:楽しんでもらえてよかったです。普段の図書館の業務では、学生の「生の声」を蔵書に反映する機会はあまり多くありません。購入希望制度はあるのですが、どうしても学問書に偏りがちで。今回のような企画は、学生のリアルな感性やニーズを知るきっかけになりますし、本に馴染みがない学生にとっても、視野を広げる一歩になっていたら嬉しいです。

——POP作りも盛り上がりましたね。
 
片山先生:皆さん表現が豊かで驚きました。これまでも学生がPOPを作る機会はありましたが、今回は丸善雄松堂の社員さんから直接コツを学んだこともあって、クオリティが一段と上がった印象です。学生がPOPを作った本はよく借りられているので、今回の選書本がどう活躍するのかも楽しみです。
 
——選書ツアー以外にも、図書サポはいろいろな企画に取り組んでいるんですよね。
 
片山先生:そうですね。図書サポは学生目線で図書館をもっと使いやすく、居心地の良い場所にしていくためのチームです。現在は1・2年生が中心となり、「読書会推進チーム」「展示棚チーム」「作家トークイベントチーム」「機関誌チーム」に分かれて活動しています。選書ツアーも、今後また開催できればと思っています。
 
——本や図書館が、もっと自由で楽しい存在だと思える機会になりそうですね。学生たちの選書棚やPOP、次回の選書ツアー開催も楽しみにしています!

学生たちが作ったPOPの一部。

選書ツアーに参加した学生の皆さんと。

後日、選書ツアーのPOP展示が完成しました!

今回学生たちが手がけたPOPや棚は、9/16から町田キャンパス三到図書館3階展示コーナーで見ることができます。ぜひオープンキャンパスなどでキャンパスを訪れた際には、学生たちの工夫と情熱が込められた作品をチェックしてみてください!