コラム

「生きてるのが奇跡」な状態をのりこえた注目の学生画家が、「自分に酔うな」と語るワケ(芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修 松本きらりさん)

UPDATE 2024.9.30

「演劇・ダンス」「音楽」「ビジュアル・アーツ」の3つの専修がある、桜美林大学芸術文化学群。

「2020年に新設された「東京ひなたやまキャンパス」で、多くの学生が芸術文化を学んでいます。

 

今回登場するのは、テレ東の手先の器用さを競う素人参加型ゲームバラエティ番組『TESAKI』に出演するなど、画家としても活躍する「三十時逢魔が時(さんじゅうじおうまがどき)」こと、松本きらりさん。学群を選んだ理由や授業のことなど、「芸術文化学群 ビジュアル・アーツ専修」の魅力を教えてもらいました!

目次
  • PROFILE
  • 作品は観察してもらってこそ生きるもの
  • 「生きてるのが奇跡」な状態で、自分の作風をみつけた
  • 進路支援が手厚いから、入学後にやりたいことが変わっても大丈夫
  • 会社で働きながら、絵を描き続けたい
  • いろんな分野を見て勉強していないと、絵は描けない
  • 松本さんの個展が東京ひなたやまキャンパスの大学祭で開催されます!
  • 松本さんがテレビ番組に出演します!

プロフィール

松本きらり(画家名:三十時逢魔が時)

【学群】 芸術文化学群
【専修】 ビジュアル・アーツ専修
【学年】 3年生(※2024年度現在)
【SNS】 X:@tin3_meruko

作品は観察してもらってこそ生きるもの

―― 今日は作品を持ってきてくださったそうですね!ちょっと見せていただいても?

 

松本さん どうぞ、どうぞ。

(絵を取り出す)

―― うわあああ、すごい!!ものすごく細かいところまで描きこまれてますね…!これ、どうやって描いてるんですか?

 

松本さん 水彩紙の上に、ミリペンっていう細いペンと、透明水彩絵の具で描くことが多いです。あと、たまにガラスペンも使います。つくりたい作品によって画材が変わるんですよね。

 

―― タイトルはあるんですか?

 

松本さん あ、私、あんまり作品タイトルつけたくないタイプなんですよ。先入観を持っちゃうことになるので。

 

―― 受け取る側が?

 

松本さん そう。自由に解釈してもらっていい。作品を受けとるためには観察をしないといけないじゃないですか。やっぱ作品って、よく観察してもらってはじめて生きるものだから。

―― ところで、なぜ松本さんは芸術文化学群 ビジュアル・アーツ専修を選んだんでしょう?

 

松本さん 幼稚園生の頃からずっと絵は描いていたんです。最初はなぜか、トマトの絵だったかな。それで、高校生になっても、ペラッペラの紙に鉛筆でへたくそな絵を描いてたんですよ。…ああー、どうしよう!!

 

―― どうかしました?!

 

松本さん 思い出すと、へたくそすぎて恥ずかしい…(笑)

 

―― (笑)じゃあ、高校では美術部に所属していたんですか?

 

松本さん いや、吹奏楽部でした。美術部の雰囲気となじめなかったので。

 

当時はウェブデザイナーになりたいって思ってたんですよね。高校2年生のときは自分でホームページをつくってて、「もしかしたら私、こういう仕事いけんじゃね?」って。

 

―― 将来的にクリエイターの仕事をしたいという気持ちがあったと。でも、美大を選ばなかったのはなぜでしょう?

 

松本さん デッサンの練習をまったくやってないから、美大を受けても実技で間違いなく落ちる。だから、大学で基礎から学んだ方がいいだろうと。私、ペーペーですからね!今もですけど。ふふふふ!

松本さん あと、最近って転職もあたりまえになってきた時代だし。コンピューターとかAIに仕事をとられるんじゃないかっていう危機感もあったんです。だから、ひとつのジャンルだけじゃなく、幅広い知識や経験を身につけたいっていう気持ちもありました。

 

その点桜美林大学は、美術をイチから学びながら、一般教養科目も勉強できるのがいいなって。

 

―― 「学群制」や「メジャー・マイナー制度」もありますしね。

 

松本さん そうそう。で、「1年生の頃は基礎を積んで、2年生からはやるぞ!」って思ったんです。そしたら、病気が見つかっちゃったんですよね。

 

※学群制

特定の分野だけではなく、隣接した分野も広く学ぶことができる仕組み。各学群の持つ専門科目の中から興味のある科目を選択して、自分の学びの形を作り上げていくことができます。

くわしくはこちら。

 

※メジャー・マイナー制度

桜美林大学では、自分の興味や志向に合わせて、オリジナルの学びをつくり出すことができます。

くわしくはこちら

「生きてるのが奇跡」な状態で、自分の作風をみつけた

――病気?

 

松本さん 去年の5月に、「なんか心臓が痛いな」って思って病院に行ったら、診察してくれたお医者さんが「今から連絡取れる方いますか?」って。

 

―― うわー!ドラマでよく聞くセリフ……。

 

松本さん そう!もう、びっくりした!(笑)「今から緊急入院するので」って。もう、怖くなって泣いちゃったんですよね。で、ICU(集中治療室)で1週間、寝たきり。

 

―― …聞いていいのかわからないですけど、なんの病気だったんですか?

 

松本さん 急性心筋炎。心臓にウイルスが入っちゃったらしいんですよ。人間の生命維持に必要ななにかの数値が、健康な人は70パーセントらしいんですけど、そのときの私は20だったみたいで。「生きてるのが奇跡」って言われました。

―― ICUでは意識はあったんですか?

 

松本さん もう、バリバリあります!元気だけど、動くと不整脈になる可能性があるから動けない。だからICUでは一週間寝たきり状態で、その後、循環器患者の病棟に移りました。体を起こすことができるようになったのはこのときからで、病室で健気に絵を描いてました。私、「ぜったいにいい成績ほしいマン」なので。はははは!

 

―― え、成績?

 

松本さん いい成績をもらえると、なんか快感なんです。ドーパミンみたいなのがドバドバ出る(笑)

 

―― そうか(笑)それで、病室でも課題をやってたんですね。

 

松本さん そうなんですよ。当時あった「グラフィック演出技法A」っていう授業の課題で、パソコンで描いて、印刷するんです。

 

私はもともとパソコンで絵を描いたことなかったから、むずかしいかなと思ってたんですけど、入院して強制的に時間ができたから、描いてたんです。

――パソコンで絵を描くって、どうやって?

 

松本さんペンタブとかなかったので、マウスでぽちぽちと。

 

―― すごい!制作時間はどれくらいですか?

 

松本さん 1日2時間を1週間つづけたかな。ぽちぽちぽちぽち、頑張ってた。まともな作品をつくったのは、人生でその作品がはじめてですね。

こちらがその作品!

―― それを描いたことで、なにか今の作風への気づきがあったんですか?

 

松本さん ありました、ありました!やっぱり細かく描くの好きだなって。隙間があるのがいやなんですよね。

 

―― へえー!

 

松本さん もちろん、適度な隙間は必要ですよ。でも隙間を埋めると、最後に見たとき、「やってやったわー!」って気持ちになる。ははっ!

 

▼松本さんの作品たち

―― 病気の経験は、その後の生き方にも影響してますか?

 

松本さん してますね。「どうせいつか死ぬんだし、やりたいことやろう」って。借金以外は、ですよ(笑)で、好き勝手やってたら、テレビに取り上げてもらえたり、こうして取材させてもらえたりするようになったんです。

進路支援が手厚いから、入学後にやりたいことが変わっても大丈夫

―― ビジュアル・アーツ専修のおすすめしたいポイントはありますか?

 

松本さん 美術以外にも、いろんな領域の勉強をしやすいところですね。実際、私も哲学の授業をとって、みんなと「友情とは何か」みたいなテーマについて議論したりしてました。いい作品をつくるうえで、いろんなことを勉強するの、超大事ですからね!

 

―― なるほど。ほかにはありますか?

 

松本さん あと、進路支援が手厚いことかな。他の大学の子に聞くと、「進路関係のことは自分で勝手にやっといて!」みたいな大学も多いみたいで。こんなに「3年生のときから、就活やった方がいいよ」って声をかけてくれる大学、そんなにないだろうなと。

 

だから、入学したあとに「アートやクリエイティブ系の仕事が向いてないな」って思ったとしても、やりようはいくらでもある。

 

―― 入学するときと希望する進路が変わっても、大丈夫だと。

 

松本さん うん。やっぱ入ってから変わることってありますよ、やりたい仕事は。私もウェブデザイナーになりたいって思ってたけど、今ではもう、「パソコンやりたくなーい!」って感じ(笑)体質的な問題なのか、画面見てると頭痛くなるし。

会社で働きながら、絵を描き続けたい

―― 現在就活中とのことですが、どんな進路を考えているんですか?

 

松本さん 小売業界で働きたいんです。

 

―― あ、クリエイティブ業界ではない?!

 

松本さん はい。私、メインの仕事にするなら新しいことがいいんですよ。小売業って、毎日あたらしい気づきがあると思うんです。ルーティンワークじゃないですから。

 

それに、小売業って転勤も多いじゃないですか。私、いろんなところに行きたいタイプなんです。場所によって客層も違ったり、住んでる人も違う。それを一生かけて勉強したいなって思いもあるので。ふふふっ。

 

だから、そういう仕事をしながら、絵はかたわらでやっていきたいんです。

―― 会社で働きながら、絵も描き続けると。

 

松本さん はい。あと、「1週間に1作品が体の限界」ってことを悟ったので。それ以上描くと、苦しくなっちゃう。私、死ぬまで病院通いしなくちゃいけないから。もし絵をメインの仕事にして、一回でも自分が倒れたら、食べていけなくなっちゃうじゃないですか。

 

―― そうか。

 

松本さん それに、いま第一志望の会社は、いろんなことにチャレンジさせてくれる社風なんです。それもいいなって。やっぱり、いろんなことをやっていきたいですからね。人生長いですから。

いろんな分野を見て勉強していないと、絵は描けない

―― 最後に、ビジュアル・アーツ専修の受験を考えている方に伝えたいことはありますか?

 

松本さん えー、なんだろう……「自分の絵に酔いしれるな」

 

―― そのこころは?

 

松本さん 「自分の絵すごいな」って思って、まわりの人の絵を見ないのは…なんだっけ、「井の中の蛙、大海を知らず」でしたっけ。

 

―― はい。

 

松本さん やっぱり自分の実力って、周りと比較してわかるものかなって思うし。

―― 他の人と比べると、自分よりすごい人や作品と出会ったときにつらいから、目を背けたくなるときもありますよね。

 

松本さん そう!でも、本当にうまくなりたいって思ってるんだったら、見たくなくても誰かの作品を見ることで、やる気が上がる。やっぱりそういうつらさって、乗り越えないといけない。

 

私も、なるべく他の人の作品を見るようにしてます。大学でも課題の講評会が開かれることがあるんですけど、過去にもう受講した授業の講評会にもお邪魔させてもらっていて。「この人の作品、バランス取れててすごいな」とか、研究できますし。

 

受け身じゃ、実力も身につかなければ、仕事も来ない。人生死ぬまで勉強です。いろんな分野を見て勉強していないと、絵は描けないから…。

 

―― めちゃくちゃ大事なことですね。

 

松本さん わーーーい!記事のタイトルはなんだろう。「自分に酔いしれるな」?はははは!

 

―― ははは(笑)いい言葉がたくさんあったから悩ましいなあ。

松本さんの今後が楽しみです!

松本さんの個展が東京ひなたやまキャンパスの大学祭で開催されます!

儚美展:三十時逢魔が時
会期:10.5(土)-10.6(日) 10:00-18:00
場所:桜美林大学 ひなたやまキャンパスHB105
※5日のみ在廊します。

松本さんがテレビ番組に出演します!

©テレビ東京

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【タイトル】 「TESAKI」
【放送日時】 2024年9月28日(土)昼12時15分~14時23分
【放送局】 テレビ東京
【配信】
広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレ東HP、TVer)にて見逃し配信!
▶︎TVer
▶︎ネットもテレ東

 

動画配信サービス「U-NEXT」にて見放題配信
▶︎U-NEXT
【公式X】 @tesaki_win

 

【番組内容】
板金職人やパティシエ、絵画アーティストなど手先の器用さに自信を持つ6名が集結!賞金とプライドを懸け、番組が用意したTESAKIゲームに挑戦!究極のイライラ・バトルに勝ち残り、賞金を手にするのは誰なのか?
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