コラム

地球をまるごと楽しんで、身体を使って学ぶ!航空学群 伊藤貢司先生

UPDATE 2025.3.26

桜美林大学には、おもしろくて頼れる先生たちがいます!

「どんな先生がいるのか」は、大学を選ぶときにとても大切な基準のひとつ。
 
そこでビビビッ!では、桜美林大学の先生たちの実態を大解剖!
研究内容からプライベートでの素顔まで、あらゆる角度から調査してみました!
 
今回紹介するのは、航空学群の伊藤貢司先生。空を飛び、野山を駆け回り、海にも潜る…!?アクティブな伊藤先生の素顔に迫ります!

目次
  • 【解剖結果】教授の解剖プロフィール!
  • 先生をあらわす3つのキーワード
  • 【解剖1】研究内容をわかりやすく教えてください!
  • 【解剖2】授業の内容を教えてください!
  • 【解剖3】先生は、どんな経験をしてきたの?
  • 【解剖4】もっと先生を知る!マル秘エピソード
  • みなさんにひと言!

【先生のプロフィール】
名前:伊藤貢司
学群:航空学群
担当科目:航空法、操縦の基礎、飛行の基礎

【解剖結果】教授の解剖プロフィール!

先生をあらわす3つのキーワード

(1)どんな研究をしている?
航空工学とデータサイエンスの融合により、乱気流の可視化を行う
 
(2)パイロットになったきっかけは?
大学時代にハンググライダーにハマり、空を飛ぶ楽しさを知った
 
(3)先生の好きなことは?
地球をフィールドに、身体を使って遊び学ぶこと!

【解剖1】研究内容をわかりやすく教えてください!

――先生はどんな研究をしているんですか?

  • 伊藤先生

    分野でいうと、航空工学とデータサイエンスですね。前者は、飛行機の操縦や設計について。後者は、大量のデータを収集・分析して傾向を見出すというものです。
     
    私は大学に勤める前、長年パイロットとして飛行機の操縦をしてきました。今はこれまでの経験や、飛行機に関する技術、安全についての知識などをできるだけ分かりやすく可視化して伝えるために、データサイエンスの技術を活用して研究を行っています。

――具体的な研究内容には、どんなものがありますか?

  • 伊藤先生

    たとえば、乱気流ですね!飛行機は乱気流の影響を大いに受けるので、予測や回避を目的として乱気流の可視化を試みています
     
    データ収集のために、自宅の庭で1日中風速を測ったり、ハンググライダーに乗っている間に計測したりすることもありますよ。データをとるだけではなく、実際に外に出て自分の肌で感じることも大切にしています。

先生が乗務したジェット機で計測したデータをもとに風の向きと強さを可視化したもの。専門知識がなくてもわかりやすい!

【解剖2】授業の内容を教えてください!

――授業ではどんなことを教えていますか?

  • 伊藤先生

    たとえば、メタバース(仮想空間)を使って、飛行機の操縦を教えています
     
    フライト・オペレーションコースは、2年次秋学期から米国アリゾナ州フェニックスで飛行訓練を開始します。出発前の春学期は、メタバースでフライトを疑似体験しながら操縦の練習を行うんです。

――フライトの疑似体験って、どんなふうにやるんですか?

  • 伊藤先生

    現地の地理を覚えるために、アメリカの空港周辺の衛星写真を使った仮想空間を利用します。これをVRゴーグルを着けて見ると、パイロットの目線をそのまま体験できるんです!

――なるほど!それはすごい!

  • 伊藤先生

    離陸や旋回も自在にできるので、日本にいながらアメリカでの飛行を実践的に練習することができます
     
    本当は、自動車の教習のように私が一緒に乗って教えられるといいんですけどね(笑)それはできないので、可能な限り補える手段を見つけ出して実践しています。

――メタバースを使った操縦練習は、珍しいのでしょうか?

  • 伊藤先生

    そうですね。私自身2年前から始めたのですが、他の大学でやっているという話はあまり聞かないので、日本でも最先端の環境だと思います

――とても贅沢な環境ですね!学生の反応はいかがですか?

  • 伊藤先生

    アメリカ研修を終えた学生に「どういう授業が役に立ったか」というアンケートをとったところ、「VRを使った操縦練習がよかった」「実機でのフライト前にイメージを掴むことができてよかった」「飛んでみたらその通りだった」という声を多くもらいました。

【解剖3】先生は、どんな経験をしてきたの?

――先生は小さい頃から飛行機に興味があったんですか?

  • 伊藤先生

    そうですね。小学校のときに『大空のサムライ』という本を読んだのがいちばんのきっかけでした。ゼロ戦の戦闘機に乗っていたエースパイロットの自伝的物語で、「かっこいい!」と思って。

伊藤先生が小学生の頃作ったゴム動力機とUコン機

  • 伊藤先生

    それで、「Uコン」というエンジン付きの模型飛行機を飛ばすようになったのが小学校5年生の頃。ラジコンの前身で、ワイヤーを使って操縦するんですよね。なので、当時から飛行機の操縦方法は少しは知っていました。
     
    そして、中学卒業後に工業高専に入ってコンピューターを学びました。「飛行機」と「コンピューター」。振り返ってみれば、現在の私につながる2つの芽は、このときすでに芽生えていたんですね。

──高専へ進学したときは、パイロットになろうとは思っていなかったんですか?

  • 伊藤先生

    思っていなかったですね〜。高専を卒業したら就職しようと考えていたんですが、たまたま大学の編入試験があることを知って。飛行機をつくる技術者になるつもりで、東大工学部航空学科宇宙コースに編入しました!
     
    でも、編入した春にはもうハンググライダーで空を飛んでいましたね(笑)飛ぶのがとにかく楽しくて、勉強は落ちこぼれちゃったんですが…。

大学生時代、ハンググライダーで飛ぶ伊藤先生

――その後、パイロットとして日本航空に入社されるんですよね。

  • 伊藤先生

    はい。技術者の募集情報を確認するつもりで求人票を見ていたら、日本航空のはがきに「一般職、整備職、パイロット」と書いてあって。面白そうだなと思って、「パイロット」に丸をつけて郵便ポストに入れたのが始まりでした。
     
    日本航空には「自社養成パイロット」として入社したんですが、最初はみんな素人なわけです。同期の中で空を飛んだことがあるのは私ひとりだったので、その経験はとても役に立ちました。飛行技術は誰にも負けませんでしたね!

――ハンググライダーと大型の飛行機では、まったく違うのでは…?

  • 伊藤先生

    ふふふ。それがね、同じなんですよ。大きい機体ほど理屈で飛ばすようなイメージがあるでしょ?でも、風でふわっと機体が持ちあがるのも、「飛ぶのはなぜ?」という原理も、まったく変わりません。ハンググライダーで身をもって学んだことは、大型飛行機の操縦にもすごく活きました。

──パイロット時代、何度も乱気流に巻き込まれたそうですね。

  • 伊藤先生

    そうですね。いちばん激しかったのは、長野県の松本空港での乱気流。その日、乱気流が発生していることは把握していたんです。会社の規定上は飛行OKだったんですが、副操縦士に「どうしようか?」と相談して。ひどい揺れを覚悟した上で飛びました。

──実際、どうだったんですか…?

  • 伊藤先生

    いやあ…飛行機の翼がもげるんじゃないかって、ものすごく怖かったですよ!機長なのでぜったい顔には出せないんですけど(笑)
     
    そのときは、日本航空から小さい航空会社に転職して2~3年目くらいの頃。機長歴はもう17年目くらいでしたが、初めて経験する激しい揺れでした。

──そのときの経験が、現在の乱気流の研究に繋がっているんですね。

  • 伊藤先生

    そうですね。不思議なもので、同じところを飛行しても揺れる場合と揺れない場合があるんです。たった数分で気流がガラリと変わったりする。なぜそうなるのか、研究を続けてようやく分かるようになってきました
     
    特定の場所で必ず揺れが起きるわけではなく、サイコロの目のように変化しているんです。揺れる、揺れない、揺れる…とコロコロ変わっていく。

──ということは、やはり乱気流の予測は難しいのでしょうか。

  • 伊藤先生

    難しいですが、だんだん確率論としては分かるようになってきています。
     
    ちょっと言い方が難しいのですが、たとえば「何%の確率で、どれくらいの揺れが起きる」という予測の仕方になる。南海トラフ地震の「30年以内の発生確率80%程度」みたいな予測と同じなんです。本当は明日起こるかどうかを知りたいところですが、確実に予測することはむずかしいんですよね。

──なるほど…。でも、命にもかかわる重要な研究ですよね。

  • 伊藤先生

    そうですね。地球温暖化の影響で、今後もどんどん乱気流が増えて危なくなっていきます。そのぶん、ますます乱気流についての研究は命に関わる大事なものになっていくと思いますね。

B767の機長として巡航中の伊藤先生

【解剖4】もっと先生を知る!マル秘エピソード

──先生の趣味でもあるハンググライダーの魅力はどんなところですか?

  • 伊藤先生

    まず、ハンググライダーって危険なんですよ。特にクロスカントリー競技で何十キロも飛ぶ場合は着地する場所は決まっていなくて、稲の植わっていない田んぼや空き地など、安全に降りられる着地場を常に探しながら飛ぶんですから。パイロットとしての危機管理能力は、ハンググライダーを通じてとても鍛えられました

──危険と隣り合わせでも、楽しいと感じる瞬間があるのですか?

  • 伊藤先生

    これはもう…変な話に聞こえるかもしれませんが、神様を感じるんですよね。
     
    何も動力を持たず、太陽の熱で生まれた上昇気流に乗って3000mの高さまで飛ぶ。だんだん海の方へ飛んでいくと、あたり一面、海も空も真っ青で。地球は丸いんだ…ということを肌で感じて、涙が出てくるんです。

──わあ…!

  • 伊藤先生

    飛行機と違って、計器もないしコックピットもない。裸一貫で飛んでいるようなものですからね。まさに鳥になったような感覚を味わえます。

  • 伊藤先生

    ハンググライダーのほかにも、山登りをしたり、バックカントリースノーボードをしたり、カヌーをやったり。それから、最近ハマっているのはスピアフィッシングですね!素潜りをして、魚を突くんです。仲間といっしょに潜って、鯛などの魚を獲って、刺身にして食べる。最高ですよ。

──陸海空、地球ぜんぶを楽しんでいるんですね!

  • 伊藤先生

    そう!そうなんです。やっぱり、アウトドアをやっていないとわからない部分があるんですよね。

雪山でバックカントリースノーボードをする伊藤先生

大井川上流でカヌー

スピアフィッシングで獲ったという魚!

仲間たちと山登り

  • 伊藤先生

    鳥人間サークル「J. F. Oberlin Aircraft Team Ciel」が2024年に鳥人間コンテストに出場したときには、飛行機を離陸させるための「離陸走」と飛行距離をできるだけ延ばす「着水技術」をパイロットの真島くん(過去記事を参照)と一緒に練習しながら教えたのですが、それは僕がアウトドアをやっていたからこそできたこと。
     
    ガリガリ勉強して知識をつめこむだけでは得られない、身体を使うことで体感できる学びが必ずあると思います。

みなさんにひと言!

――最後に、桜美林大学が気になっている方にメッセージをお願いします!

  • 伊藤先生

    勉強というのは、学ぶのが目的ではなく、なにかの目的を実現するために学ぶ場合もあると思うんですよね。たとえば「この飛行機を飛ばしたい」と思えば、ものすごく勉強するし、どんどん頭に入ってくるじゃないですか。
     
    だから、自分が興味のあること、突き詰めてみたいことのために勉強してほしいなと思います。

──自分の興味関心に正直になっていい、ということですよね。

  • 伊藤先生

    そのとおりです。振り返ってみれば、私自身もそうだったんですよね。「面白いな」「気になるな」と思うことを突き詰めていった結果、今の自分があるわけです。
     
    これまでは一直線に進むキャリアがよしとされていましたが、人生はそんなふうにいかない。自分の可能性を狭めず、いろんな経験をしてみてもいいと思うんです。経験が増えれば、選択肢も増えますから。
     
    人生、いつどんな風が吹くかは分かりませんが、自分を信じて羽ばたいてほしいですね!